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研究内容

研究領域   生態系生態学,植物生態学

 

キーワード  炭素循環,生態系機能と生物多様性の関係,遷移,地球温暖化,高山生態系

 

研究の概要  陸域生態系における植物と環境の相互作用の解明と,地球温暖化等の急激な環境変動が生態系や生物に及ぼす影響の解明

       を目指しています.これらの解明にむけて,陸域生態系を対象として炭素などの主要な物質の循環とそのプロセスに着目

       した研究に取り組んでいます.私たちの研究室では,興味に応じて地球上の様々な生態系を対象に研究を行っています.

       実際にフィールドに入って調査・観測をすることが多いですが,目的に応じて室内実験も平行して行います.特に,下記

       の4つの研究に力を入れています.

高山生態系における植物の生理生態的な適応メカニズム

 高山生態系は,強光・低温・強風等の極めて厳しい環境下にあります.高山植物はそのような厳しい環境に適応した植物ですが,今日の急激な地球温暖化に適応しきれず,絶滅の危機に瀕するものも多くいるとされています(Korner et  al. 2003).この問題を解決する上で不可欠なのは,高山植物の環境に対する適応メカニズムの理解です.

 最近,我々は未だによく分かっていない高山に特有の低圧環境に対する植物の適応メカニズムの解明を目指し,器官~個体レベルを対象とした生理生態学的研究を行っています(早川 2012).まだ研究を始めたばかりですが,独自に開発した大気圧を調整できる大型の培養装置を用いた室内実験を行い(上の写真),低気圧に応じてCO2の取り入れ口である気孔の形態や関連する光合成特性が変化している可能性を見出しています.

様々な環境変動が植物や生態系に及ぼす影響

 地球温暖化は,最も懸念される環境問題の一つであり,最新の報告では,我々の生活を脅かすような様々な警告も発せられるような現象です(IPCC AR5).温暖化に伴う温度上昇が生態系に与える影響は,特に高緯度域や高山生態系で大きくかつ早く顕著化すると言われています.

 我々は,チベット高原や日本の中部山岳地域など標高が高い高山生態系を対象として,温度上昇が高山植物やそれらを含む生態系の構造や機能にどのような影響を与えるか調べています.これらの研究と平行して,現在の植物の分布状況やその生理特性をきちんと記述することがとても重要であり,そういった研究を上記のフィールドの他に様々な生態系(東アフリカ高山帯,南米アンデス山系や北極圏スバールバル諸島)で行っています.また,温度のような物理的環境だけでなく,動物の被食等の生物的環境が高山生態系や草原生態系に与える影響についても調べています.

陸域生態系の炭素循環の時空間的な変動パターンとそのメカニズム

 陸域では,遷移にともなって構造(例えば森林構造)が大きく変化します.これによって,生態系の炭素循環も変化することはよく知られています.しかし,その詳細は分かっていないことも多く,陸域生態系全体の炭素吸収量の不確定性の主因になっています.

 我々も遷移にともなう炭素循環の変化に関する研究を行っていますが中でも遷移の最終的な姿である成熟林"old-growth forests"の炭素循環に興味を持って研究を進めています.成熟林は,炭素吸収能力はないというのがこれまでの通説ですが,近年になって成熟林でも炭素吸収能力があるという報告が出てきました(Luyssaert et al. 2008 Nature) .我々もこれまでの通説通りではないと考えており,それを解明すべく.成熟林に特有な森林構造(上のような様子)と炭素循環機能の関係に着目して研究を進めています,

生物多様性と生態系機能の関係検証

 生物多様性と生態系機能の関係は,今日の生態学の中心的関心の一つです(Loreau et al. 2002).両者には何らかの関係性があるとされていますが,その関係性を示す実証データは実は多くありません.我々は,自ら開発した群落レベルの光合成量と呼吸量を評価するシステムを用いて群落レベルの多様性との関係を調べ,光合成と呼吸では多様性との関係が全く異なることを明らかにしました (Hirota et al. 2010).さらに最新の研究のよって,多様性と生態系機能の関係を解くカギとして,多様性によって変化する植物群落の葉落構造が重要なことを突き止めました(Hasegawa et al. in prep.).最近は,微生物群集の多様性と土壌有機物無機化等の機能の関係について,三宅島に舞台を移して研究を展開しています.